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京都地方裁判所 昭和37年(ヨ)250号 判決 1962年11月30日

申請人 浜口正雄 外二名

被申請人 京都全但タクシー株式会社

主文

被申請人は申請人等三名を被申請人会社自動車運転手として取扱い、且つ申請人浜口正雄に対し金一六三六一一円五〇銭及び昭和三七年一一月一日以降毎月末日限り一日当り金一二五八円五五銭の割合でその月分を、申請人角谷光夫に対し金一七一〇四四円九〇銭及び昭和三七年一一月一日以降毎月末日限り一日当り金一三一五円七三銭の割合でその月分を、申請人田中武一に対し金一二九五六一円九〇銭及び昭和三七年一一月一日以降毎月末日限り一日当り金九九六円六三銭の割合でその月分を、それぞれ支払え。

訴訟費用は全部被申請人の負担とする。

(注、無保証)

事実

申請人等訴訟代理人は、

「被申請人は申請人等三名を被申請人会社自動車運転手として取扱い、且つ申請人浜口正雄に対し金一六二一六二円及び昭和三七年一一月以降毎月末日限り金三八六一〇円宛を、申請人角谷光夫に対し金一六九四七〇円及び昭和三七年一一月以降毎月末日限り金四〇三五〇円宛を、申請人田中武一に対し金一二八三九四円及び昭和三七年一一月以降毎月末日限り金三〇五七〇円宛を、それぞれ支払え。」との仮処分の裁判を求め、その申請の理由として、

「一、被申請人は一般旅客自動車運送を業とする株式会社であり、申請人浜口は昭和三六年六月下旬から、申請人角谷は同年八月三日から、申請人田中は同年九月五日から、いずれも被申請人会社に自動車運転手として雇われ、毎月申請人浜口は金三八六一〇円、申請人角谷は金四〇三五〇円、申請人田中は金三〇五七〇円の各給料を受けていたものである。

二、而して申請人等は昭和三六年一二月一一日被申請人会社の従業員をもつて自主的民主的に組織された京都全但タクシー労働組合(以下単に全但労組という)が誕生するやその組合員となつたが、全但労組は全国自動車交通労働組合連合会(以下単に全自交という)を上部団体とする全国自動車交通労働組合連合会京都地方連合会(以下単に全自交京都地連という)にこれをその上部団体として加入しているため、被申請人はこれを極度に嫌悪し、これに対抗すべく昭和三七年一月二三日全但労組に未加入の従業員や一部の全但労組役員等を懐柔しそれらをもつて非自主的非民主的な京都全但従業員組合(以下単に全但従組という)を組織させるとともに、他方全但労組員に対しては金品を提供し脅迫等の強制手段を用い或いは全但労組員であることの故に不利益に取扱うなどおよそ使用者の不当労働行為とされるあらゆる方法を講じてこれを全但労組から脱退させ同時に全但従組へ加入させるべく強要したので、申請人等も止むなく他の多くの全但労組員とともにその頃全但従組に加入しその組合員となつた。かくて申請人等は昭和三七年一月二三日頃からは全但労組員たる資格と全但従組員たる資格とを兼ねるに至つたものである。

三、ところで申請人等はいずれも昭和三七年六月二五日被申請人から『当会社は昭和三七年六月二四日貴殿所属の京都全但従業員組合より同日貴殿を除名した旨の通告と其理由書の交付を受けた。そこで右除名の手続並びに除名の正当性につき調査検討したところ、いずれもその正しい除名であると信ぜられるので、当会社は昭和三七年三月二三日付協定第二条(2)に基いて本日貴殿を解雇する』との理由で解雇の通告を受けた。

右の昭和三七年三月二三日付協定というのは被申請人と全但従組との間に同日締結された労働協約であつて、その第二条(2)というのは『組合から除名若しくは脱退した組合員については会社に異議のない場合に限りこれを解雇する。但し組合は除名の場合遅滞なくその理由を附して会社に通知しなければならない』とのいわゆるユニオンショップ条項である(以下右労働協約を単に本件ユニオンショップ協定という)。

四、しかしながら右各解雇(以下単に本件解雇という)は次の理由でいずれも無効である。

(一)  本件解雇は労働組合法第七条第一号及び第三号の不当労働行為に該当し無効である。

1  すなわち

(1)  全但従組は、その結成に際して使用者たる被申請人の指導と介入をうけ又その存続に当つても同様の支配干渉の下に立つていたもので、労働者団体としての自主性を喪失したいわゆる御用組合であるから、協約能力を持たず、従つて本件ユニオンショップ協定は無効のものであり、

(2)  仮にそうでないとしても、被申請人は全自交京都地連傘下の全但労組の勢力拡大をおそれ全但労組員を企業内より排除して全但労組の完全壊滅をはかるために御用組合的な色彩の強い全但従組の役員数名を懐柔のうえ本件ユニオンショップ協定を締結したのであるから、被申請人が全但従組と本件ユニオンショップ協定を締結した行為は、それ自体として全但労組員に対する不利益待遇及び全但労組に対する支配介入となり労働組合法第七条第一号及び第三号の不当労働行為に該当し、従つて本件ユニオンショップ協定は無効のものであるところ、

2  本件解雇はこのような無効な本件ユニオンショップ協定の履行に藉口し申請人が全但労組員として或いは全自交個人加盟者として正当な組合活動をしたことを理由とするものであり、(ちなみに申請人等は前記のように全但従組への加入を余儀なくされつつも全但労組員たる身分を失わず且つ全自交にも個人加盟して全但労組員並びに全自交加盟者として正常な組合活動を行つて来た)また全但労組員を企業内より排除し全但労組を壊滅せんとする意図を具体的に推進するものであるから、労働組合法第七条第一号及び第三号の不当労働行為に該当し無効である。

(二)  本件解雇は正当な事由なき解雇又は解雇権の濫用として無効である。

1  けだしまづ本件ユニオンショップ協定の申請人等に対する効力は次のとおりである。即ち

(1)  ユニオンショップ協定は本来未組織労働者に対して団結強制を行い対使用者との関係において団結を誇示し労働者の要求を貫徹するために締結されるものであるから本件のように一企業内に二組合が併存し互いに対立抗争している場合には、一組合のみの締結したユニオンショップ協定の効力は全面的に否定さるべきものである。何故ならこのような場合にユニオンショップ協定の効力を肯定すれば、ユニオンショップ協定を締結した組合は自己の把握している組合員のもう一方の組合への移動を阻止し併せて未組織労働者の自己の組合への加入を強制できるのに対しもう一方の組合は従来自己の把握していた組合員を組織につなぎとめておくのに精一杯で先細りを待つことになるのであり、かくては前の組合が後の組合を企業内から長期にわたつて排除することもできることになり団結権の保障の名において団結権の侵害が行われることになるわけで、労働者の団結権の真の保障にもとるといわなければならないからである。従つて本件ユニオンショップ協定は無効である。

(2)  仮に一企業内に二組合が併存し互いに対立抗争している場合に一組合のみの締結したユニオンショップ協定もその効力を全面的には否定されないとしても、かかるユニオンショップ協定は脱退又は除名によつていずれの団結からも終局的に離れ未組織労働者となつた者に対してのみ適用さるべきものであるところ、本件においては申請人等はいずれも御用組合的な全但従組を脱退して自己のもとから属していた全但労組に形式実質ともに復帰したにとどまるのであるから、本件ユニオンショップ協定は少くとも申請人等に対してはその効力を及ぼし得ないものである。

2  ところで本件解雇は本件ユニオンショップ協定の履行ということのみを理由とするものであるが、右のとおりその本件ユニオンショップ協定は無効であるのであるから、本件解雇は正当な事由なき解雇又は解雇権の濫用に該当し無効である

からである。

(三)  また仮に本件ユニオンショップ協定は有効であるとしても、元来ユニオンショップ協定によつて使用者は組合に対し一般的抽象的に解雇義務を負担するにすぎないから、ユニオンショップ協定に基くといわれる個別的具体的な解雇が有効であるか否かは、右解雇が真に右義務の履行としてなされたものであるかそれとも単に右義務の履行を仮装したにすぎず真の意図は不当労働行為意思の実現にあるものであるかの見地からあらためて検討しなければならないところ、前記のとおり本件解雇は、右の後者に該当することが明白であるから、解雇権の濫用として無効である。

五、ところがそれにも拘らず被申請人は本件解雇以降申請人等を被申請人会社従業員として取扱わず給料も支給しないので、申請人等は被申請人を相手取つて本件解雇無効確認等の本案訴訟を提起すべく準備中であるが、右訴訟の本案判決の確定を待つていては申請人等の生活が全く危殆に頻することになるので、申請人等の被申請人会社従業員としての地位の保全と本件解雇以降の給料の支払を求めるため本件仮処分申請に及んだ。」と述べた。(疎明省略)

被申請人訴訟代理人は、

「申請人等の本件仮処分申請はこれを棄却する。

申請費用は申請人等の負担とする。」との判決を求め、

申請の理由に対する答弁並びに主張として、

「一、申請の理由一について。

同項記載の事実のうち、申請人等が申請人等主張の金額の各給料を受けていた事実は争うが、その余の事実は認める。

二、申請の理由二について。

同項記載の事実のうち、全但労組が昭和三六年一二月一一日結成された事実、申請人等が即時右組合に加入した事実、全但従組が昭和三七年一月二三日結成された事実、申請人等が同日右組合に加入した事実及び全但労組が全自交京都地連を上部団体とし全自交京都地連が全自交を上部団体としている事実はいずれも認めるが、その余の事実は否認する。

申請人等は昭和三七年一月二三日全但労組を脱退すると同時に全但従組に加入したのであり、従つて同日以後は全但従組員たる資格のみを有していた者である。

三、申請の理由三について。

同項記載の事実は全部認める。

全但従組は申請人等が全但従組の組合員でありながら全但労組の上部団体であつた全自交京都地連に個人加盟したとの噂を聞き、昭和三七年六月二四日査問委員会を開き申請人等を糺問したところ、同人等は同月一一日頃全自交京都地連に個人加盟した旨を自白したので、全但従組規約第五九条にいわゆる『組合員にして組合規約に反し義務を怠り責任を果さず統制を乱し組合の名誉を傷け重大な損害を与えたる者』に該当するとして同日同条により申請人等を除名したのであり、被申請人は同日全但従組よりその旨の通知を受けた。而して被申請人はこれより先申請人等主張の日時に全但従組との間に申請人等主張の内容の本件ユニオンショップ協定を締結していたので、右除名の手続及び理由を調査検討したところ、いずれも適法且つ正当であるとの確信を得たので、同日申請人等に対し申請人等主張の内容の本件解雇の通告をしたのである。なお被申請人はその際申請人等に対し解雇の予告手当を翌二六日支払う旨併せ通告したが、申請人等は右解雇予告手当を受領しようとしないので、被申請人は同年七月一三日京都地方法務局に申請人等に対する解雇予告手当を弁済供託した。

四、申請の理由四について。

同項記載の事実は全部否認する。

申請の理由四(一)1(1)について。

全但従組は、全但労組が組合員相互の自主的な意思の連絡と組合としての統一を欠いたまま結成されしかもその後執行機関の無思慮から使用者に対し徒らに敵対意識を有し戦闘的で過激な行動に出ることが多かつたため組合員の懐疑不信を招いて自壊し、他方全但労組未加入従業員の労働者意識の自覚が高まり、その結果結成されたものであり、その後も自主性ある労働組合として存続しているものであつて、被申請人はその結成なり存続なりについてなんら支配も介入もしていないから、全但従組は御用組合ではない。

仮に全但従組が御用組合であるとしても、憲法第二八条は広く勤労者の団結権団体交渉権を保障しているのであるから、御用組合と雖も協約能力は有するものと解すべきである。

申請の理由四(一)1(2)について。

全但従組は昭和三七年三月二三日当時すでに被申請人会社従業員の過半数を擁する組合であり、日本労働組合総同盟(以下単に総同盟という)を上部団体としてこれに加入していたのであるが、これが自己及び総同盟の勢力維持と拡大のため被申請人に対しユニオンショップ協定の締結を迫つた場合、被申請人としては当然右協定を締結できるわけであつて、右協定の締結が結果的に全但労組と全自交の勢力拡大阻止と完全壊滅を来たすことになつたとしても、それは両組合の生存競争における弱者敗走に当るものであり、また被申請人に右協定の締結の際その点の認識があつたとしてもさればといつて右協定の締結を拒絶しうるわけのものでもないから、右協定の締結は不当労働行為にはならない。

申請の理由四(一)2について。

以上に述べたとおり被申請人と自主性ある労働組合たる全但従組との間には有効なユニオンショップ協定が締結されており、全但従組がその組合員であり従つて右協定の拘束力を受ける申請人等を組合の統制を紊す行為があつたという理由で除名し、かつその除名が手続理由ともに正当である以上、被申請人が右協定の履行として申請人等を解雇したのは、解雇権の正当な行使であつてなんら不当労働行為にはならない。本件解雇は、申請人等が正当な組合活動をしたことを理由とするものではないし、全但労組に対し支配介入をする意図でなされたものでもない。

申請の理由四(二)1(1)について。

さきに述べたとおり全但従組は被申請人会社の従業員の過半数を擁するいわゆる多数組合であり、全但労組は僅か数名を擁するに過ぎないいわゆる少数組合であつたのであるから、民主主義における多数決の原理に従えば、被申請人が多数組合である全但従組と本件ユニオンショップ協定を締結し全但従組の団結権を保障したことは取りも直さず被申請人会社の全従業員の団結権を保障したことになるわけで、なんら労働者の団結権の真の保障にもとるものではない。本件ユニオンショップ協定の締結により全但労組が先細りとなりその団結権が圧迫される結果となつても、これは全但労組が少数組合であることから来る必然の結果にほかならない。

申請の理由四(二)1(2)について。

さきに述べたとおり申請人等は全但従業員たる資格のみを有する者であるから、これに全但従組が締結した本件ユニオンショップ協定の適用があるのは当然で、申請人等の主張はその前提を欠くのみならず、申請人等除名の当時全但労組は既に消滅していたのであるから、申請人等がこれに復帰することはあり得ない。

申請の理由四(三)について。

さきに述べたとおり本件解雇は本件ユニオンショップ協定の拘束力の及ぶ者に対する同協定の正当な適用による解雇であり、当時全但労組は既に消滅しこれに対する或いはその組合活動に関しての不当労働行為のあり得よう筈もないから、被申請人の解雇権の正当な行使であつて、なんら解雇権の濫用となるものではない。

五、申請の理由五について。

同項記載の事実は全部否認する。」と述べた。(疎明省略)

理由

一、当事者間に争いのない事実

被申請人が一般旅客自動車運送を業とする株式会社であり、申請人浜口が昭和三六年六月下旬から、申請人角谷が同年八月三日から、申請人田中が同年九月五日から、いずれも被申請人会社に自動車運転手として雇われていたこと、昭和三六年一二月一一日被申請人会社従業員をもつて全但労組が結成され、申請人等は即時その組合員となつたこと、次いで昭和三七年一月二三日被申請人会社従業員をもつて第二組合たる全但従組が結成され、申請人等は同日その組合員となつたこと(その際申請人等が第一組合たる全但労組から脱退したか否かの点を含めて申請人等の所属組合如何の点は、当事者間に争いがあるので詳細は後に考察する)、被申請人会社が同年三月二三日全但従組との間に「第二条(2)組合から除名若しくは脱退した組合員については会社に異議のない場合に限りこれを解雇する。但し組合は除名の場合遅滞なくその理由を附して会社に通知しなければならない。」とのいわゆるユニオンショップ条項を含んだ労働協約すなわち本件ユニオンショップ協定を締結したこと、申請人等がいずれも同年六月二五日被申請人から「当会社は昭和三七年六月二四日貴殿所属の全但従組より同日貴殿を除名した旨の通告及びその理由書の交付を受けたので、右除名の手続並びに除名の正当性につき調査検討したところ、そのいずれもが正しい除名であると信じられるので、本件ユニオンショップ協定に基き本日貴殿を解雇する。」との理由で本件解雇の通告を受けたことは、いずれも当事者間に争いがなく、申請人等がいずれも昭和三七年六月二四日全但従組より同組合規約第五九条にいわゆる「組合員にして組合規約に反し義務を怠り責任を果さず統制を乱し組合の名誉を傷つけ重大な損害を与えたる者」に該当するとの理由で、同条を適用されて除名されたことは、申請人等の明らかに争わないところであるから、申請人等においてこれを自白したものとみなす。

二、申請人等の所属組合

本件解雇の効力の問題の考察に入る前に、この問題と密接な関係を持つ申請人等の所属組合如何の問題を考察する。

(一)  申請人浜口の場合

申請人浜口が昭和三六年一二月一一日全但労組結成と同時にその組合員となり昭和三七年一月二三日全但従組結成と同時にその組合員となつたことは前記のとおりであるが、証人北村俊三、同中山都博、同大井勇、同朝倉義行、同平川豊和の各証言及び申請人浜口本人尋問の結果によれば、申請人浜口は右全但従組加入と同時に全但労組からは脱退したが、その二日後である昭和三七年一月二五日当時の全但労組副執行委員長岩田稔に翻意を促され全但従組を脱退し再び全但労組に復帰した。その後同年三月半ば頃当時の全但従組執行委員長浅井誉詩尋に勧誘され再び全但労組を脱退し全但従組に復帰した。そして同年五月一七日全但労組員朝倉義行に勧誘され三たび全但労組に加入したがこのときは全但従組は正式に脱退しなかつたことが認められ、以上の事実からすれば、申請人浜口は昭和三七年五月一七日からは全但労組員たる資格と全但従組員たる資格とを併有していたものとみるべきである。右認定を覆えすに足る証拠はない。

(二)  申請人角谷の場合

申請人角谷が昭和三六年一二月一一日全但労組結成と同時にその組合員となり昭和三七年一月二三日全但従組結成と同時にその組合員となつたことは前記のとおりであるところ、証人朝倉義行、同平川豊和の各証言及び申請人角谷本人尋問の結果によれば、申請人角谷はその後一度も全但労組から脱退したことがないとされており、他方証人北村俊三、同大井勇の各証言によれば、申請人角谷は右全但従組結成後二、三日して全但労組を脱退したこととされていて、そのいずれが真なりやはにわかに断じ難いが、仮に後の方が正しいとしても、証人朝倉義行の証言及び申請人角谷本人尋問の結果によれば、申請人角谷は昭和三七年六月一日再び全但労組に加入したがその際全但従組からは脱退しなかつたことが認められるので、結局いずれにしても申請人角谷は少くとも昭和三七年六月一日からは全但労組員たる資格と全但従組員たる資格とを併有していたものとみるべきである。右認定を覆えすに足る証拠はない。

(三)  申請人田中の場合

申請人田中が昭和三六年一二月一一日全但労組結成と同時にその組合員となり昭和三七年一月二三日全但従組結成と同時にその組合員となつたことは前記のとおりであるが、証人北村俊三、同中山都博、同大井勇、同朝倉義行、同平川豊和の各証言及び申請人田中本人尋問の結果によれば、申請人田中は右全但従組加入と同時に全但労組から脱退したがその二、三日後当時の全但労組執行委員長松永四郎に翻意を促され全但従組脱退届と全但労組加入届を書いて同人に渡したが、そのうち全但従組脱退届は全但従組に届かなかつた。そしてその後昭和三七年六月二一日全但労組員朝倉義行に勧誘され再確認の意味でもう一度全但労組に加入したことが認められるので、申請人田中は昭和三七年一月二五日頃からは全但労組員たる資格と全但従組員たる資格とを併有していたものとみるべきである。疏乙第五号証は、証人平川豊和の証言によれば、昭和三七年三月二三日当時の全但労組員のうち表面に出て活動している者だけを記載したもので右当時の全但労組員全部を記載したものではないと認められる(右認定に反する証人矢野尾誉司郎の証言は、疏乙第五号証の表題部分が同証言によつても同証人の作成したものと認められること及び前記証人平川豊和の証言に照らし、措信し難い)から、右認定に反するものではなく、他に右認定を覆えすに足る証拠はない。

三、本件解雇の効力

(一)  本件ユニオンショップ協定の効力

1  全但従組の協約能力

およそ労働組合が協約能力を有するためには労働組合法第二条本文の要件を具備する組合であることを要するとともにかつそれで足りると解すべきである。けだし労働協約は利害相反する労使間の自由かつ自主的な交渉をとおして労働条件の維持改善を図ることを目的とするものであるから、労働協約の一方の当事者たる組合はその意思決定につき相手方当事者たる使用者の拘束を受けない自主性ないし独立性を持つものでなければならないが、かような自主性ないし独立性を持つ限り使用者の利益代表者の参加を許し使用者の経費援助を受けていても自由かつ自主的な交渉はなお期待しうるからである。被申請人は憲法第二八条を掲げて自主性のないいわゆる御用組合と雖も協約能力は有すると主張するが、憲法第二八条がかかる御用組合に対してまで団結権なり団体行動権なりを保障した規定でないことは労働者の団結権及び団体行動権が認められるに至つた歴史的経緯よりして明白であるから、右主張は到底採用に値しない独自の見解である。

そこで右見地に立つて考えてみるのに、本件全証拠を以てしても全但従組が労働組合法第二条本文所定の自主性を有しないことは疎明せられない。けだし証拠を検討してみると、

(1) 左記括弧内の証拠及び成立に争いのない疏甲第二四号証によれば、

(イ) 被申請人は被申請人会社従業員が労働組合を結成することを嫌忌し、昭和三六年五、六月頃から新しい従業員の入社の際にその大部分から「組合活動はしない。もしした場合には解雇されても已むを得ない」旨の誓約書をとつていた(いずれも成立に争いのない疏甲第二七号証の五三、六〇、八五及び証人松永四郎の証言)

(ロ) それにも拘わらず同年一二月一一日被申請人会社従業員五八名くらい(従業員の殆んど)をもつて全自交京都地連(以下単に全自交ともいう)を上部団体とする全但労組が結成されるや、被申請人は全但労組を全自交から脱退させようと策し、被申請人会社常務取締役山本哲一は同月一七日全但労組の役員等一一名を自宅に呼んで同人等に対し「非組合員を一本化するために全自交を脱退せよ。そうすればすぐにでも労働条件を全自交加盟の他の組合なみにする」ともちかけて全但労組の全自交からの脱退を勧誘しその際酒食を提供したりしたが、結局右勧誘は成功しなかつた(前記疏甲第二七号証の五三、八五、いずれも成立に争いのない疏甲第二七号証の五二、六三、八九、証人松永四郎の証言)

(ハ) 前記山本常務は同月一一日全但労組に加入していない被申請人会社従業員清本規雄外一二名に対し「全但労組よりユニオンショップ協定締結の申入があつても断じて応じない」旨を書面で約束した(成立に争いのない疏甲第一〇号証、申請人浜口本人尋問の結果)。そして右清本規雄は同月中右書面を携えて申請人浜口方を訪れ同人に対し「会社(被申請人のこと)は全但労組に加入していない従業員に対しては全自交がストライキをしている場合でも平均賃金を保障してくれるから君も全但労組を脱退せよ」と勧誘した(申請人浜口本人尋問の結果)。

(ニ) そして昭和三七年一月二三日被申請人会社従業員のうちもと班長などをしていたクラスを中心とする全但労組非組合員及び一部の全但労組員計二五名ないし三三名くらいをもつて第二組合たる全但従組が結成された(前記当事者間に争いのない事実のほかは、証人倉橋勇、同北村俊三、同大井勇の各証言)。

(ホ) 被申請人会社営業主任野添弘は同年二月二日頃全但労組員浪江久雄に対し全但労組脱退を勧誘した(証人朝倉義行の証言により野添弘が作成したものと認められる疏甲第一九号証、前記疏甲第二七号証の五二、証人朝倉義行の証言)。

(ヘ) 全但労組の同年二月初め頃のいわゆる三役は、執行委員長松永四郎、副執行委員長岩田稔、書記長小林正高であつたが、右三名はその頃次のような事情から相次いで被申請人会社を退職した。すなわち、松永は、同月七日被申請人会社警備員と称する生父佐二郎という男に頼まれ同人を被申請人会社正門から京都市内団栗橋附近の「たぬき茶屋」まで乗せて行くと、そこで同人と入れかわりに篠原組の大将と呼ばれる鈴木某という男とそのつれの女とが乗つて来、右両名の命ずるままに右両名を滋賀県八日市市まで乗せて行き、そこで右両名から勧められてビールを一、二杯飲み、再び同人等を乗せて京都へ帰つて来、更に同日午後六時頃右鈴木に頼まれ再び同人を京都市内宮川町から滋賀県大津市石山町まで乗せて行き、同所で同人から京都へ届ける荷物としてトースター程度の大きさの物を預り同時に一〇〇〇円貰つたが、その帰途同所附近からチンピラ風の若い男を乗せて帰つて来たところ、翌日被申請人会社側から、以上のことは飲酒運転運賃を貰い乍ら他の客を乗せたことにあたるし当日の運転日報に記載されている時刻が実際のそれと相違しているといわれ、始末書を書かされたうえ、更にその翌日すなわち同月九日午前二時頃京都市内円山公園の千楽旅館で被申請人会社相談役大町某や前記鈴木から脅迫めいた言葉も交えて執拗に退職を迫られ、その場で退職願を書いて結局被申請人会社を退職した(前記疏甲第二七号証の八五、成立に争いのない疏甲第二七号証の一〇五、証人松永四郎の証言)。岩田は、同月三日頃被申請人会社庶務課長田中豊から「組合活動から身をひき会社をやめてくれ」といわれ、以前被申請人会社営業主任小西某から「組合活動をしたら即時解雇する」といわれていたし、又任意退職にすれば会社から多額の退職金をくれるということだつた(現に九万円貰つた)ので、同月五日依願退職した(前記疏甲第二七号証の五八)。小林は、同月七日頃被申請人会社労務主任岡宏美から全但労組脱退全但従組加入を勧誘されそれを断ると、同人及び被申請人会社社長田中寛からそれなら一応被申請人会社を退職し被申請人会社の職制となつて右岡労務主任等と力を合せて働いて欲しいといわれ、同月九日被申請人会社を退職した(証人小林正高の証言。なお疏甲第二七号証の六〇、八〇、八五、一〇四のうちいずれも右認定に反する部分は、上掲証拠に照らし、措信し難い)。そして右松永小林の両名は、右退職後は被申請人から依頼され被申請人から金を貰つて直接には右岡労務主任等の指図を受けて全但労組切崩しの仕事に従事することとなつた(証人松永四郎同小林正高の各証言)。

(ト) 岡労務主任と小林正高は、同月一一日前記千楽旅館で当時の全但労組中央委員会議長朝倉義行に対し全但労組脱退全但従組加入を勧誘し脱退すれば帝産か相互に入れてやる(帝産は帝産オート株式会社のこと相互は相互タクシー株式会社のことでこの両社はともに京都市内における一流タクシー会社である)と申向け、同人をして全但従組に加入するくらいなら会社をやめようと決意させ、同日被申請人会社から退職させた(前記疏甲第二七号証の六〇、成立に争いのない疏甲第二七号証の一〇四、証人小林正高の証言、なお疏甲第二七号証の六〇、八〇、証人朝倉義行の証言のうちいずれも右認定に反する部分は、上掲証拠に照らし、措信し難い)。

(チ) 松永四郎と小林正高は、同日京都市中京区木屋町三条上るのもりぐち旅館で当時既に一一名に減つていた全但労組員全員に対し自分達の退職の理由を釈明すると同時に、一諸に来た岡労務主任ともども全但労組の解散と全但労組員全員の全但従組への加入を勧誘したが、結局この話合いは物分れに終つた(前記疏甲第二七号証の五三、六三、一〇四、一〇五。なお疏甲第二七号証の八〇のうち右認定に反する部分は、上掲証拠に照して、措信し難い)。

(リ) 次いで同日午後京都市東山区神宮道仁王門角の有楽荘で前記山本常務、被申請人会社営業部長古田立明、岡労務主任、松永、小林等が右のとおり全但労組員全員の一挙全但従組加入による組合一本化に失敗したのでその善後策を協議していたところ、前記田中社長より電話で松永に対し「君の力で全但労組を解散させてくれ」といつて来たが、松永が「現段階ではそれは困難だ」と答えると、「それならば全但労組員を個別に全但従組へ加入させるか被申請人会社から退職させるかしてくれ」と指令して来、爾後はその方針で進むことになつた(前記疏甲第二七号証の一〇五、証人松永四郎の証言)。

(ヌ) 被申請人は、全但労組に対しては、結成以来団体交渉の申入があつても一応形だけは応ずるが前記田中社長はその席に姿を見せず他の役員は社長に相談しなければと逃げを打つて結局団体交渉の実をなからしめていたのに引替え、全但従組に対しては、同月一六日団体交渉を持ち、その結果基本給を二一五〇〇円(前記全自交傘下の他の組合なみ)とする給与体系を定め、停年制を満五五才まで延長し、道路交通法違反による罰金は会社が全額負担することとし、且つ右の停年制延長や罰金会社負担は全但従組員のみに適用することとした。そして右団体交渉結果は、ビラにして同日から数日間被申請人会社構内に掲示された(右ビラの写真であることに争いのない検甲第一号証、前記疏甲第二七号証の五二、成立に争いのない疏甲第二七号証の一〇六、証人倉橋勇、同朝倉義行、同中山都博の各証言)。

(ル) 被申請人は全但労組員平川豊和、井上清、林祥克等を新車から旧車に乗換えさせたり車庫待ちから流しに変えたりし、他方全但従組役員中山都博、小川健太郎等を旧車から新車に乗換えさせたりして、全但労組員と全但従組員とを差別待遇した(旧車より新車の方が客が多くつき疲れが少いし、流しより車庫待ちの方が身体が楽であることはいうまでもない)(成立に争いのない疏甲第二七号証の五七、前記疏甲第二七号証の六三、証人平川豊和の証言)。

(ヲ) 同年二月半ば頃京都市内のバーで前記松永、小林と前記岡労務主任とが会談した際、岡は松永、小林に対し「全但従組結成には自分が策動した。自分はそのために神戸から京都に派遣されたのである。全但労組結成後会社が全但労組と何の取決めもしなかつたのは全但従組結成のための時間稼ぎであつた。全但従組結成の際は予め全但労組非組合員であつた旧班長連中を京都市内円山の旅館に呼寄せて協議したし、その席には古田営業部長も出ていた。」と語つた(証人松永四郎、同小林正高の各証言。なお証人岡宏美の証言中右認定に反する部分は前掲証拠に照らし措信しない)。

(ワ) 同月一七日頃神戸市内のホテル全但で右松永小林と前記田中社長とが面談した際、田中は松永、小林に対し「御苦労だつた。全但労組員は大分少くなつたがこれからも全但労組員追出しに協力してくれ。そして全但の職場には全自交の息のかかつた者が一人もいないようにしてくれ。全但従組員の中から活動家が出て来ないように全但従組とユニオンショップ協定を結ぶつもりだ。」といつた。(証人松永四郎の証言)。

(カ) 右小林は、かような被申請人の依頼により同年三月頃全但労組員井上勲、林祥克、木久某、橋本某、平井某、秋田勇次、井上清等に対し、次々と全但労組脱退を勧誘し、被申請人から六、七万円から一五万円くらいの退職金を渡して、いずれもこれを退職させた。右のうち正規の退職金を貰える資格のあるのは井上勲、秋田勇次くらいで、同人等も正規に貰える額はたかだか一万五千円くらいであつた(前記疏甲第二七号証の一〇四、証人小林正高の証言)。

(ヨ) 同月二三日前記田中社長山本常務等は全但従組の中央委員以上の役員全員を京都市左京区岡崎の竹中旅館に招き予め被申請人会社側で準備して来た案を示してユニオンショップ協定の締結を求めたところ、右の全但従組役員は右の案がいわゆる尻抜けユニオンの形式をとつているに拘わらずさしたる異論もなしに即日これに応じ、本件ユニオンショップ協定が締結された(証人北村俊三、同中山都博、同大井勇の各証言、申請人角谷本人尋問の結果、以上の証拠により真正に成立したものと認められる疏乙第二号証。なお証人矢野尾誉司郎の証言のうち右認定に反する部分は、上掲証拠に照らし、措信し難い)。

(タ) 同日現在全但労組員として表面に出て活躍していた者は(それが全但労組員の全員であつたかどうかは別論として)当時組合員資格が争われていた朝倉義行、小久保博司の二名を除けば、平川豊和、井上恵温、細見勇夫、新井勇三の四名になつていた(前記のとおり表題部分を除き真正に成立したものと認められる疏乙第五号証、成立に争いのない疏甲第二七号証の七七、九二、証人平川豊和、同矢野尾誉司郎、同細見勇夫の各証言)が、右四名は、同年四月一四日被申請人から差別待遇されるのと被申請人会社の職制や全但従組員が絶えず家へ押しかけて来て全但労組脱退を勧誘するのとで精神的に疲れていたところへ被申請人から多額の退職金をくれるという話があつたので、退職した。しかし右退職金を貰うについては次のような条件が被申請人の方から出された。すなわち全但労組と全自交京都地連はこれより先の同年二月二〇日京都府地方労働委員会に対し被申請人を相手どつて不当労働行為救済命令を申立てており、さきの四名はその証人として予定されていたのであるが、(1)各自退職届と全但労組脱退届を書くこと(2)全但労組の解散届と解散議事録を作成すること(3)地労委に対する提訴を取下げること(4)さもなければ地労委に証人として出頭しないこと。さきの四名は、右の条件のうち(3)は不可能であるとして応じなかつたが、その他は呑み((2)については実際には解散のための組合大会は開かず解散届と解散議事録のみ作成した)、その代償として一人当り五〇万円以上の退職金を貰つた。なお右四名は古い者でも入社後三年にしかならない(前記疏甲第二七号証の九二、証人細見勇夫、同平川豊和の各証言。なお地労委に対する提訴の事実については、成立に争いのない疏甲第二七号証の二、さきの四名が地労委における証人として予定されていた事実については、成立に争いのない疏甲第二七号証の三二、六一、退職金の額については、証人矢野尾誉司郎の証言も証人岡宏美同矢野尾誉司郎の証言中右認定に反する部分は上掲証拠と対比して措信しない。)ことが認められるけれども、以上はすべて、全但従組に自主性がないことをうらずけるに足るとなしがたく、しかもその他には同組合の自主性のないことを証するに足る疎明がない。

(2) そして却つて、他方左記括弧内の証拠によれば

(イ) 全但労組の執行部は結成以来組合経験の乏しい若手が占めていたためその言動に穏当を欠く点があり、そのために年輩の被申請人会社従業員の中にはこれについて行けず全但労組の行き方に批判的な者も少からずあつた(前記疏甲第二七号証の八五、証人北村俊三、同中山都博、同大井勇の各証言)。また全但労組の一般組合員はすべてがすべて明確な労働者的自覚をもつて組合結成に参加したというわけではなく、あちらの組合から誘われればそれに加入しこちらの組合から誘われればこれに加入するといつた態度の者も少くなかつた(右各証拠及び申請人等各本人尋問の結果)。そして全但労組は総評系の全自交傘下の組合であるため総評或いは全自交の統一行動を含めてストライキその他の団体行動に出ることが多くそのために全但労組員であれば給料として月々受取るべき金員が少い実情にあつた(前記疏甲第二七号証の一〇四)。そしてこれらの事情が全但従組が結成されその組織が拡大される一因をなしていた(以上の各証拠)。

(ロ) 申請人角谷同田中等も全但従組の中央委員をしていた(申請人角谷同田中各本人尋問の結果)。

ことが認められる。

従つて申請人等のこの点の主張は採用できない。

2  本件ユニオンショップ協定の締結と不当労働行為等

(イ) 全但従組が本件ユニオンショップ協定締結の当時である昭和三七年三月二三日現在被申請人会社従業員の過半数を代表する組合であつたことは申請人等の明らかに争わないところであるから、申請人等においてこれを自白したものとみなすべきである。

そうだとすると、労働組合法上使用者が従業員の過半数を代表する組合とユニオンショップ協定を締結することは不当労働行為にはならないとされており(同法第七条第一号但書参照)、本件ユニオンショップ協定の締結もこの一般的有効要件は充たしているわけであるから、その限りでは不当労働行為にあたらないというべきである。

(ロ) 本件ユニオンショップ協定の締結が全但労組壊滅の目的でしかも全但従組役員を懐柔してなされたとの点について。

本件ユニオンショップ協定締結の当時被申請人会社には全但従組のほかに今一つの組合として全但労組が存在したことは当事者間に争いがない。

さて同一企業内に二つの組合が併存している場合そのうちの一つの組合の締結したユニオンショップ協定の効力如何については周知のとおり判例学説上争いの存するところであるが、当裁判所は次のように理解する。すなわちかようなユニオンショップ協定も前記のユニオンショップ協定締結についての一般的有効要件を充たしている限り有効のものであるがその効力は全面的に無制限に認められるものではなく、その協定を結んでいない今一つの組合の組合員に対してその効力を及ぼし得ないのはもとより、いずれの組合にも加入していない従業員や新たに採用された従業員であつても、―これらの者が両組合結成後又は新規採用後相当の期間内にいずれかの組合に加入するか或いは新たに組合を結成し、しかもその組合が既存の組合に比してより自主的な組合であるならば、―これらの者に対してもその効力を及ぼし得ず、更にはそのユニオンショップ協定を締結した当該組合の組合員であつても、―これらの者がその組合を脱退し又は除名された場合に、その後直ちに今一つの組合に加入するなり新たに組合を結成するなりし、しかもそれらの組合が既存の組合に比してより自主的な組合であるようなときは、―これらの者に対しても、その効力を及ぼし得ないものと解する。けだし憲法第二八条は、労働者が団結により対使用者の関係における自らの交渉力を強化することを保障するために設けられたもので、いかなる労働者いかなる自主的な労働者団体に対しても平等にこれを保障しようとするものなのであるから、この団結権保障の精神からすれば、一面では労働者団体が自らの組織を維持拡大して対使用者の関係における自らの交渉力を強化する目的で組織強制を行うことは、同一企業内にその他にも労働者団体があろうがなかろうが、当然許されて(尤も労働者団体が少数団体で自らの組織作りすら満足にできていないときもあり得るわけで、このような労働者団体にユニオンショップ協定による組織強制を行うことまで許すことは、却つて団結権保障の精神に反することとなることもないではないが、法はかかる場合に対処する措置を講じており―労働組合法第七条第一号但書参照―本件に直接関係のないところであるから詳論しない)しかるべき道理である、とともにその反面同じく団結権保障の精神からして同一企業内の他の労働者団体の団結権及びその一つの現われとしての未組織労働者などに対する組織活動の権利並びに個々の労働者(他の労働者団体の構成員はもとより未組織労働者や組織強制を行おうとしている当該労働者団体の構成員を含めて)の団結権及びその一つの現われとしての組織選択の権利も侵害せられてはならないのであり、このことは上記のように一つの労働組合が組織強制を行うことを許されるからといつて、変ることのあろうはずはないからである。

このように同一企業内に二つの組合が併存している場合に一つの組合の締結したユニオンショップ協定の効力は制限的なものであるから、仮りに本件ユニオンショップ協定が全但労組壊滅の目的で締結されたとしても、それによつて全但労組が壊滅することはあり得ない(ただ実際上の問題としてはそれによつて未組織労働者なり全但労組員なりが全但従組に吸収されてしまうことは考えられるが、それはユニオンショップ協定の効力を認める以上法も当然に予想しているところであり、また全但労組の組織活動により防ぎ得るものである)わけであり、従つて本件ユニオンショップ協定がそのような目的で締結されたからといつて、そのことだけでその締結それ自体が不当労働行為になることはないと考えられる。(もちろん本件ユニオンショップ協定が全但労組壊滅の目的で締結された場合その締結そのものが不当労働行為に当るかどうかということと、被申請人が全但労組壊滅の目的で本件ユニオンショップ協定を締結し、それを適用して被申請人会社従業員を解雇した場合に、その解雇が不当労働行為になるかどうかということとは、別個の問題である。)

なお本件ユニオンショップ協定の締結が被申請人の主導のもとに忽忙のうちになされたことは、前記認定(1(1)(ヨ)参照)のとおりであるが、本件にあつては、それ以上に進んで右締結が被申請人によつて全但従組役員を懐柔してなされたとまで認めるに足る証拠はない。

3  結論

してみると申請人の主張する「本件ユニオンショップ協定は、全但従組が協約締結能力を有せず、仮にそうでないとしてもその締結自体が不当労働行為にあたるので、無効であり、従つてこのような本件ユニオンショップ協定の履行が有効になされるはずもないのに、本件解雇はその履行に名をかる不当労働行為であるから無効である」(申請理由(一))「そうでないとしても、二組合併存等下の本件ユニオンショップ協定の効力に照らし同協定の履行としてなされた本件解雇は正当な事由を欠くものとしてまたは解雇権を濫用したものとして無効である」(申請理由四(二))との申請理由は、いずれも爾余の点につき判断するまでもなくこれを肯認できない。

そして他に本件ユニオンショップ協定の無効事由について主張も疎明もない本件にあつては、本件ユニオンショップ協定は、申請人等に効力を及ぼすか否かは別として、それ自体としては有効であるといわざるを得ない。

(二)  本件解雇と権利濫用(不当労働行為を含む)の成否

申請人等は、本件ユニオンショップ協定が有効である場合につき本件解雇が解雇権の濫用にあたり無効であると主張しているのである(申請理由四(三))が、解雇が不当労働行為である旨の主張は、解雇権の濫用の主張の一つとしてこれに含まれるものとみてさまたげない(なお申請人等の右には主張は幾分措辞に適切をかくものがないではないが、本件解雇が不当労働行為にもあたるかの如き口吻をもらしている部分も認められる)から、右主張には本件ユニオンショップ協定が有効であるとした場合にも本件解雇は不当労働行為にあたるとの主張を含むものとして判断する。

1  本件解雇の経緯

前記当事者間に争のない各事実と、いずれも成立に争のない疏甲第一ないし第三号証の各一、二、同第四ないし第六号証及び疏乙第一号証の一ないし三、証人中山都博の証言によりその成立の認められる乙第七号証、証人中山都博、同大井勇、同岡宏美、同矢野尾誉司郎の各証言を合せると、申請人等は昭和三七年六月二四日全但従組から同組合の統制をみだすものとして同組合規約第五九条によつて除名処分をうけた(以下本件除名処分という)こと、右除名の理由である全但従組の統制をみだすというのは具体的には申請人等が全但従組員でありながら全自交京都地連に個人加盟したことをさす(ちなみに全但従組は総同盟をその上部団体とするのに対し、全自交京都地連はこれと性格を異にする総評系の全自交をその上部団体とする)ものであること、全但従組は本件ユニオンショップ協定の規定に則り右除名処分を被申請人に通告し、被申請人は同協定の義務履行として本件解雇をしたことが認められる。右認定を左右するに足る疎明はない。

2  権利濫用等の存否

(1) 事実関係

前記各認定事実及び前記疏甲第一ないし第三号証の各一、二、同第四ないし第六号証、疏乙第一号証の一ないし三、証人倉橋勇、同平川豊和、同細見勇夫、同松永四郎、同朝倉義行、同中山都博、同大井勇、同北村俊三、同岡宏美、同矢野尾誉司郎の各証言(ただし証人大井勇、同北村俊三、同岡宏美、同矢野尾誉司郎の分については、それぞれ後記措信しない部分を除く)、申請人等各本人尋問の結果を綜合すると、

(イ) 全但労組は昭和三六年一二月一一日創立以来その構成員に幾多の変動を経たけれども引続き現在まで全自交京都地連及び全自交を順次その上部団体として存続して居り、昭和三七年一月二三日全但従組が結成されてからは、被申請人会社にはこの両組合が併存していること。

(ロ) 申請人等は最初は全但労組の組合員にすぎなかつたが、その後全但労組と全但従組との組合員資格を併有するようになり、この資格併有が全但従組には判明せず、申請人等は本件除名当時全但従組の組合員としてのみ取扱われ(いわゆる匿名組合員としての全但労組員であつた)、前記申請人等の全自交京都地連への個人加盟は極秘裏に行われたこと。

(ハ) 被申請人は、全自交及び全但労組を嫌悪し、機会あるごとにさまざまな手段を弄して全但労組員の被申請人会社からの排除ないし全但労組の壊滅を策し、そのためにはあえて不当労働行為ないしそれに類する行為に出ることも辞さなかつた。もつとも被申請人のそのような全自交及び全但労組に対する対抗手段は被申請人において積極的にした場合、直接になされた場合とそうでない場合などがありはしたものの、全但労組設立以降引続いて波状的に繰返され、一部全但労組員をしてむしろ退職した方がましだとまで思わせるほどのものであつたのであつて、前記のように全但労組の構成員が変動を重ねたのもそのことが一因をなしていたばかりでなく、少くとも本件除名処分当時申請人等が組合員資格を兼併のまま匿名組合員であつたり全自交京都地連への個人加盟の情を秘匿したりしたのは、もつぱらそのような被申請人の全自交及び全但労組に対する弾圧に対処して全但労組員として組合活動をする身の安全をはかつたことに基くものであり、現に申請人等は本件除名直後にはじめて全但労組に名実ともに復帰して公然と組合活動をするようになつており、このような事情から本件除名処分当時までには全但労組の実体は地下に潜入してしまつていたこと。

(ニ) 全但従組は、もともと全但労組の組合活動が過激で闘争的に過ぎることに対し批判的な被申請人会社の職制機構の一部をなす(班長級の)従業員を中核として結成されたばかりでなく、被申請人が上記のように全但労組を嫌悪排撃する関係上おのずと全但労組の対抗馬的性格をになうこととなつているところから、その設立そうそうに、それまで全但労組が被申請人からその都度団体交渉を回避されがちであつたのに、早くも有利な労働条件等を以てする団体交渉の妥結をみた外爾後引続き陰に陽に被申請人から温情的なひ護支援をうけ他方これに馴れ甘んずる傾きもあつて、なるほど言葉どおりの御用組合とはいいがたいけれども、多分に御用組合的色彩を帯有する存在であること。

(ホ) 被申請人は、全但従組が前記のような御用組合的色彩を帯びているのをさいわい、全但労組の壊滅ないし全但労組員の被申請人会社からの排除の意図を内包の上、全但従組と本件ユニオンショップ協定を締結した。このことは右締結にあたり被申請人が全但従組にあらかじめその当日の昭和三七年三月二七日に協定締結のための団体交渉を持つべき旨を通告しないでおいて単に同組合役員の参集を求め、その参集の場で即座に被申請人の方からしかも被申請人の方であらかじめ作成した原案を示してユニオンショップ協定の締結方を申入れたこと、しかるにさしたる紛議を生ずることもなく、短時間(一時間ないし一時間半)の審議を経ただけで原案どおりに協約の締結がなされたこと、全但従組はユニオンショップ協定の締結に同組合大会の承認を得ねばならぬ筋道であつたが、その締結が同組合に有利でもあり、被申請人の右のような出方もやむを得ないとして右承認はこれを事後に行うこととし被申請人の申入に応じたこと、ユニオンショップ協定が全但従組と結ばれれば全但従組の組織強制をもたらすのはもちろん事と次第によつては事実上全但労組員(匿名組合員を含む)を被申請人会社から排除し得て全但労組の壊滅を容易ならしめることもあるのを被申請人は知つて居り田中社長はそのような趣旨を昭和三七年二月一六、一七日頃前記松永に公言していたこと、本件ユニオンショップ協定成立後の同年四月一三日頃にも被申請人が全但労組員平川豊和外三名に対して金銭の提供と引換えにその退職・全但労組からの脱退・全但労組の解散の実施などをなす旨約束させ同組合の団結権を侵害する行為をしていること、などから明かであること。

(ヘ) 本件解雇当時、被申請人は全但従組に全但労組の匿名組合員がいることを聞知していながら、既に全但労組は存在しないとの見地に立ち、かつ又本件解雇権の行使については全但労組が存在すると否とまた申請人等が全但労組に加入していると否とはなんらかかわりがないと考えて、全但従組から本件除名処分の通告をうけるや、間髪をいれず、本件ユニオンショップ協定に基き本件解雇をなしたこと。

以上の事実を認めることができる。証人大井勇、同北村俊三、同岡宏実、同矢野尾誉司郎の各証言中右認定に反する部分は前顕各証拠と対比して措信しない。

(2) 右認定事実に基く判断

(イ) 前記のように、同一企業内に二つの組合が併存している場合一つの組合の締結したユニオンショップ協定の効力の範囲は制限的に解するのを相当とするから、本件ユニオンショップ協定は申請人等にはその効力を及ぼし得ないものといわなければならない。

すなわち被申請人は本件ユニオンショップ協定に基き全但従組に対し申請人等を解雇することを義務づけられてはいないわけである。

(ロ) ところで前記のような全但労組設立以来の被申請人と全但労組ないし全但労組員との間の諸事情からすると、全但従組員たる申請人等が秘密裡に全自交京都地連に加盟したということだけからでも、当時既に全但従組員に匿名組合員たる全但労組員がいるを知つていた被申請人には、本件解雇にあたり申請人等が全但労組員であることが十分に予想し得られ、従つて全但労組の存在も十分予想し得られていたものといわなければならない。

そして右のような被申請人の認識、前記のような被申請人の本件ユニオンショップ協定締結の企図及び全但労組や全但労組員に対する数多の弾圧行為並びに本件解雇が本件除名に接着して急遽なされたことからすると、被申請人はかねてから全但労組の壊滅ないし全但労組員の被申請人会社からの排除を策していた折柄、本件除名処分の通告をうけ、まさにそのような企図を以て締結した本件ユニオンショップ協定のあるのをさいわい、右のように全但労組員たるべきことの知り得られた申請人等の被申請人会社からの排除ないしその存在を十分予想し得られた全但労組の壊滅を企図して本件解雇をなしたものであることを否みがたい。

被申請人が「本件解雇は本件ユニオンショップ協定上の義務を履行するもので全但労組の存否如何また申請人等が全但労組に加入しているかどうかは問題とならぬ」と考えていたことは右認定を左右するに足るものではない。けだしユニオンショップ協定上の義務履行としての解雇がなされる場合、なるほど使用者としては(ユニオンショップ協定の効力の点を捨象する限り)他組合の存否ないし被解雇者の当該他組合への加入の有無を考慮したところで結果的にはこれを考慮しないときと同様解雇権の行使を要求されるわけであるが、その際使用者において他組合の存することないし被解雇者がその他組合の組合員であることの認識がある以上右のような事情から使用者が被解雇者の他の組合への加入や他組合の存在など問題にならぬと考えることと不当労働行為の意図を以てその解雇をなすこととは二者択一の関係にあるものでなく却つて併存してなんら差支えがなく、(なお当該ユニオンショップ協定が使用者の協定上の義務履行としての解雇権の行使につき使用者の裁量如何によつては必ずしも解雇権を行使しなくてもよいとするいわゆる尻抜けユニオンと呼ばれるものである場合には、使用者の前記のような見解が不当労働行為企図のかくれみのとなる公算が極めて大であろう)、ただその併存のときには当該解雇がユニオンショップ協定上の義務履行として肯認せられるかそれとも不当労働行為としてその効力を否定せられるかにつき両者競合の場合の効力如何という問題が生起するにすぎないからである。しかも本件にあつては、被申請人が本件ユニオンショップ協定の効力からして本件ユニオシショップ協定履行のため解雇を義務づけられているものでないこと前記のとおりであるから、「本件ユニオンショップ協定上の義務を履行したにすぎない」という被申請人の主観的な見解は、それだけでは本件解雇を正当ならしめるに足る事由とはなしがたいわけである。

そしてまた被申請人が本件解雇当時「全但労組は存在しない」との見解を有していたことも右認定を左右するに足りない。けだし前記の当時全但労組の存在したことと当時において全但労組の存在が十分予想せられたという被申請人の認識とはいずれも客観的な事実なのであるから、被申請人の見解を以て排除し得べきものではなく、却つてそのような全但労組の存在や被申請人の認識が認められるにかかわらず被申請人が右のような見解を有したことは、その見解を有するにつき他に合理的な理由の認むべきもののない本件にあつては、むしろ前記認定のような被申請人の企図をうかがわしめるに足るものですらあるからである。

(ハ) してみると、結局、本件解雇は一応本件ユニオンショップ協定上の義務履行としての解雇権の行使という形式をそなえているが、その実申請人等が全但労組員たるべきことの知り得られた被申請人において、本件ユニオンショップ協定上の義務履行に藉口して、そのことの故に申請人等を被申請人会社から排除するために行われたものであり、しかもその結果客観的には本件ユニオンショップ協定によつて本件解雇を義務づけられていない被申請人において全但労組員である申請人等を解雇したものといわなければならない。

3  以上の次第であるから、本件解雇は労働組合法第七条第一号の不当労働行為として無効のものというべく、またその限りにおいて解雇権の行使につき権利濫用あるものとして無効のものというべきである。

四、申請人等の従業員たる地位の確認の利益と賃金請求権

本件解雇が不当労働行為として無効である以上申請人等と被申請人間の労働契約は依然有効に存するものというべきである。ところで前記疏甲第二七号証の七七によれば、被申請人会社では毎月二〇日が賃金締切日でありその月の二五日が賃金支払日であることが認められるところ、成立に争いのない疏甲第一五号証の一ないし一〇及び申請人等各本人尋問の結果によれば、申請人等が本件解雇前三箇月間すなわち昭和三七年六月二〇日から同年三月二一日までの間に被申請人から支払を受けた賃金の総額は、申請人浜口一一五七九七円、申請人角谷一二一〇四八円、申請人田中九一六九五円であり、これをその期間の総日数九二で除すると、申請人等の平均賃金は、申請人浜口一二五八円五五銭、申請人角谷一三一五円七三銭、申請人田中九九六円六三銭となる(申請人浜口、同田中は、右平均賃金算定の基準となつた期間一時休業したが、右平均賃金はその場合の最低保障額を上廻ると考えられるので、右休業は結論に影響を及ぼさない)ことが認められる。而して申請人等が本件解雇の日以後被申請人から支払を受けるべき賃金の額が、右平均賃金額以上であるという立証もない代りに、それ以下であるという立証もないから、申請人等が本件解雇の日以後被申請人から支払を受けるべき賃金の額は、右平均賃金額であるとみるのが相当である。従つて申請人等は被申請人に対し被申請人会社自動車運転手としての地位の確認を求める利益を有するとともに、本件解雇の日以後の右平均賃金額相当の賃金請求権を有する。

五、仮処分の必要性

申請人等各本人尋問の結果によれば、申請人等はいずれも本件解雇により以後被申請人から就労を拒否されて失職し、家族を抱えているため生活費を親戚知人から借入れて辛うじて生計を賄つている現状にあることが認められ、現今の労働事情からして右現状は早急に好転する見込みもないから、本案判決確定まで待つていては更に多額の借入れを要しまた従来の借入れの返済を迫られることも充分あり得るわけで、申請人等が著るしい損害を蒙ることは明らかである。これに本件解雇の事情なども併せ考察すれば、本件仮処分の必要性は優に肯認できる。

六、結論

よつて、本件仮処分申請は申請人等が被申請人に対し被申請人会社自動車運転手たる地位の保全を求め、本件解雇の日以後の申請人浜口については一日当り一二五八円五五銭(すでに履行期の到来した昭和三七年一〇月三一日までの分は計一六三六一一円五〇銭となる)の、申請人角谷については一日当り一三一五円七三銭(昭和三七年一〇月三一日までの分は計一七一〇四四円九〇銭となる)の、申請人田中については一日当り九九六円六三銭(昭和三七年一〇月三一日までの分は計一二九五六一円九〇銭となる)の割合による賃金の支払を求める限度で正当として認容し、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 鈴木辰行 菅浩行 露木靖郎)

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